2013年11月18日月曜日

これからの経営の25の課題〜40%もの社員が仕事へのやる気を失っている時代に〜

掲題の40%という数字は、近頃僕のお気に入りであるハメル氏の『経営は何をすべきか?』で紹介されている、タワーズワトソンの調査に基づくものです。
「会社のために全力を尽くそう」というやる気満々の社員はかろうじて5人に1人(21%)だったそうです。4割近く(38%)はほとんど、というよりも完全にやる気を失っており、残りはどちらでもない、という結果が書かれていました。
本著は僕にとっては非常にインスパイアリングで、勇気づけられる書籍です。ハメル氏は自分自身が35年ものあいだ企業経営に携わり、ビジネススクールで教鞭を執ってきたなかで、存分に怒ったり、希望を抱いたりしたことはほとんどなかったことを認め、僕たちに25のマネジメント革新への課題を投げかけてくれています。
そういう訳で、今回のブログはほとんどハメル氏が投げかけてくれている課題の抜粋です。(笑)が、内容は濃いですし、皆さん考えさせられる視点も多いと思います。ぜひ、この内容をみていただいた皆さんには、他人事としてではなく、変革の旗を自ら、少しずつでもいいのでふって欲しいと思います。もちろん、僕も当事者としてこれからも組織開発というものに関わっていく所存です。ハメル氏もこうおっしゃっています。
世の中を変えるのは、結局は反抗者と理想主義者だから
存分に理想を、情熱を、夢を、志を抱きましょう。そこからすべては始まります。
輝かしい仕事人生を皆で手を取り合ってつくりあげていきましょう。


①志を改める

■課題1 経営陣がより次元の高い目的を果たす

大多数の企業は、株主価値の最大化に向けて努力しているが、さまざまな角度から見て、この目的は適切なものとはいえない。…新時代のマネジメントは、世の中から重要で高尚だと認められる目標を立て、その達成を目指さなくてはいけない。

■課題2 コミュニティ重視の姿勢や企業市民としての自覚を、マネジメントに深く根付かせる

従来の企業統治の仕組みでは、上級幹部や投資家など特定の関係者の利益が増進し、その陰で社員や地域コミュニティがないがしろにされるため、えてして利害関係者どうしの対立が深まる。…「あらゆる利害関係者は互いに依存している」という動かしがたい事実を受け止め、マネジメントに市民や地域社会の考えを反映させなくてはいけない。

■課題3 人々の心をつかむ言葉と慣行を用いる

人間に負けないくらいの適応力、革新性、献身性などを組織に持たせるには、新時代にふさわしいマネジメントを模索し、名誉、真実、愛情、正義、美など、心揺さぶる理念を日常業務に反映できるよう、方法を探る必要がある。

②能力を解き放つ

■課題4 信頼関係を深め、不安を和らげる

従来型のマネジメント・システムは往々にして、社員の熱意や能力への強い不信に根ざしている。…だが、組織が逆境に耐えるためには、不安の少ない、信頼感に満ちた風土が欠かせない。…不信は士気の低下を招き、不安は発言や行動を縛るため、どちらも21世紀の組織からは追い出さなくてはならない。

■課題5 管理手段を刷新する

従来の管理制度は、社員を法令や自社の方針に従わせるには適しているが、その反面、創意工夫や進取の精神、熱意などを削いでいる。…新時代の管理制度では、組織の規律を損なわずに革新性を引き出すために、トップダウン型の監督よりも同僚による評価を重んじる必要がある。

■課題6 想像力を解き放つ

ごく一握りの人材だけに創造的な仕事を任せ、興味を追求するための時間を与える一方、大多数の人材については、…想像のための場所と時間を十分に与えていない。これからのマネジメント・プロセスは、「創造性は多くの人の内に宿っているから、組織的に伸ばさなくてはならない」という前提をもとに築く必要がある。

■課題7 多様性を高め、活用する

多様性は生物の種の保存に欠かせないが、企業が長く存続するうえでの前提条件でもある。経験、価値観、能力などの多様性を実現しないかぎり、戦略の刷新に弾みをつける力を持つ、型にはまらないアイデアや実験を生み出すことはできないだろう。

■課題8 情熱溢れる組織をつくる

情熱は成果を何倍にも高める。とりわけ、価値ある目的のために人々が集まり、同じ志で結ばれると、情熱は凄まじいパワーを生み出す。…企業は、社員が仕事に大きな価値を見出すようお膳立てして、情熱溢れる職場づくりをしなくてはならない。そのためには、同じような志を持った人材どうしを引き合わせたり、人材の興味と組織目標のベクトルを揃えたりするべきだろう。

■課題9 仕事を楽しいものにする

人生の生産性が最も高まるのは、仕事を遊びのように感じた時である。楽しんでいると、熱意、創造性、機知が解き放たれるのである。今後、最も大きな成功を手にするのは、仕事と遊びの線引きを曖昧にする術を学んだ企業だろう。…今後はマネジメントの革新者の手で、骨の折れる単調な仕事を葬り去らなくてはいけない。

③再生を促す

課題10 参加型の手法を用いて組織の方向性を決める

変化のペースが速まり、事業環境が複雑さを増すなかでは、少数の経営幹部だけで再生への道のりを描いて人々を先導するのは、難しくなってきている。このため、将来の方向性を決める仕事に大勢を巻き込む必要がある。…会社の進むべき道を決めるにあたっては、権限の大きさや地位に関係なく、先見性や洞察力に秀でた人物に発言力を持たせなくてはならない。

■課題11 戦略立案プロセスを改め、創発を促す

分析をもとにトップダウンで「唯一最善の戦略」を導こうとする手法を捨てて、変異、淘汰、保持といった生物界の原理をもとに戦略立案を行う必要があるだろう。まずは、いくつもの選択肢を考え(変異)、低コストの試行をとおして有望な選択肢を次々とふりにかけ(淘汰)、市場の反応が最もよい戦略ヒト、モノ、カネを費やす(保持)のだ。

■課題12 組織の脱構築と分解

事業機会が目まぐるしく訪れては消える環境では、組織は能力やインフラを速やかに組み替えることができなくなてはならない。…適応力を高めるためには、全社を小さなユニットに分けて、プロジェクトごとに自在に形を変えられる組織形態をつくらなくてはいけない。組織改編は、4、5年おきに訪れる苦痛に満ちた出来事であるべきではない。

■課題13 アイデア、才能、経営資源の社内市場を設ける

長期的には階層組織よりも市場のほうが高い成果を上げる傾向にある。なぜなら、リソースの配分に長けているからである。…市場においては短期のゆがみは避けられないが、長い目で見れば、適切な機会に適切な資源を投入することにかけて、大きな組織よりも秀でている。政治的判断の入り込まない融通の利くリソース配分を実現するには、新しい施策と旧来の施策が平等な条件のもとで人材と資金の獲得を争えるよう、社内市場を設けなくてはならない。

④権限を分散させる

■課題14 意思決定から政治を排除する

たいていの組織では、大きな判断は立派な肩書きを持った人々が下す。…これには少なくとも3つの問題点がある。…社内政治に影響されない意思決定プロセスを設け、社内の知を結集し、幅広い視点や意見を取り入れる必要があるだろう。

■課題15 自然発生的で柔軟な階層性を築く

組織から階層がいっさい取り払われることは、将来に渡って考えにくいが、トップダウン型の権限関係が及ぼす弊害は、早急に和らげなくてはいけない。…ポストではなく貢献度に応じて、権威や影響力を与えるのである。階層を設けるにしても、それを固定化してはならず、付加価値を生み出す人材に権限を集め、そうでない人材からは権限を取り上げるべきなのである。なお、階層制はひとつに絞るのではなく、各重要分野の専門性を反映して、いくつもの階層制を併存させる必要がある

■課題16 社員の裁量の幅を広げる

大きな組織の最前線で働く人々はたいてい、変革を起こす役割をほとんど負わない。…適応力と熱意を高めるには、社員の自由を大幅に拡大をしなくてはならない。現場での試行錯誤やボトムアップの施策を挫くのではなく、促すようなマネジメント・システムが求められる。

■課題17 リーダー層の仕事を問い直す

自然発生的に生まれた階層には、真性のリーダー、つまり、正規の権限がなくてもまわりの人々を動かすことのできる人物が求められる。リーダーはこれからの時代、…組織づくりの名匠、新しい制度の構想者、意義の創始者と見られなくてはいけないだろう。くわえてリーダーは、社員たちが恊働や革新を進めやすく、高い成果を上げられるような職場環境づくりを、自分たちの主な責務と位置づけなくてはいけない。

■課題18 情報をできるだけ広く共有する

マネジメント・パワーは従来、情報統制をよりどころとしてきた。…業績についての情報は幅広く共有しなくてはいけない。最前線で働く人々に最優先で情報を与えるべきである。将来的には、組織利益の最大化につながる行動に必須のデータと知識を全社員に漏らさず提供するような、情報システムが求められるだろう。

■課題19 反対意見を奨励する

業界を革新するのは一般に、既存企業ではなく天邪鬼的な行動をとる企業である。…打開策は、異端の発想を促し、反対意見を認め、有力な幹部よって気に入らないアイディアが潰されるのを防ぐようなマネジメント・システムを設けることである。 

⑤調和を追求する

■課題20 全体を俯瞰する業績尺度を設ける

既存の業績評価制度にはkズ多くの欠点がある。第一に、「短期の利益目標を上回る」といった具体的なゴールを達成した場合に高評価を与える一方、新しい成長プラットフォームを築くような、重要な目標をなおざりにしがちである。第二に、経営判断が環境や社会に及ぼす負の影響はたいていは見落とす。第三に、顧客主導型イノベーションの範囲や規模のような、クリエイティブ・エコノミー下で価値創造につながる要因を、十分に考慮しているとはいえない。 

■課題21 二者択一を乗り越える

組織が繁栄するかどうかは、規模と柔軟性、利益と成長、フォーカスと試行錯誤、管理と自由など、一見したところ折り合いのつかないいくつもの要請を同時に満たす満たす能力を、あらゆる階層のあらゆる人材が持つかどうかで決まる傾向が強まっている。 

■課題22 大局観のもと、長い将来を見据えてマネジメントを行う

経営幹部はともすると、報酬・インセンティブ制度の影響で近視眼的になり、優先次項も偏ってしまう。…マネジメントを革新するうえでの重要課題は、長期に渡る価値創造が経営陣の利益になるような新しいインセンティブ制度を設けることである。 

⑥発想を変える

■課題23 右脳を強化する

マネジメント研修はこれまで、左脳的な発想に重点を置いてきた。…しかし、不安定さを増す環境下では、新たな認知スキルが必要とされる。具体的には、ダブルループ学習、デザイン思考、創造的問題解決、社会意識などである。ビジネススクールや企業は、経営幹部がこれら新しい技能を習得しやすいように、研修プログラムの内容を改めなくてはいけない。 

■課題24 社内外両方の力を動員できるよう、新たなマネジメント手法を考案する

最近の成功著しいビジネスモデルの多くは、組織内だけに閉じず、価値創造のネットワークや、組織の垣根を超えたさまざまな共同生産に頼る傾向を強めている。…オープン・イノベーションと仮想恊働の世界で成功するには、大勢を動員して全体の足並みを揃えるために、新しい手法を考案する必要があるだろう。 

■課題25 マネジメントの哲学的土台を再構築する

各組織は今後、事業運営に秀でるだけでなく、高い適応力や革新性を発揮し、働き手のやる気を引き出し社会的責任を果たすことが求められる。…マネジメント2.0を築くには、技術者や会計士だけの力では足りない。アーティスト、哲学者、デザイナー、生態学者、環境保護活動家、神学者などの知恵や発想をも活かさなくてはならない。 

いかがだったでしょうか。
ほとんど抜粋だったですが、僕はこの25の課題には非常に感銘を受けました。こうしたことをコンサルティングという立場から支援をしていきたいですね。

思想を体現する。

人生を決めているもの。住宅と街並みとぼくの視線から考える人生論。

  家づくりを検討しはじめて約2ヶ月。あれだけ回避していたローンのリスクを受け入れて、家を建てることに決めた。日本の一戸建ての寿命が30年のところ、90年もつ家を建てることを知ったのが大きなきっかけだった。90年もてば3歳の息子も死ぬまで住むことができるだろう。それならローンを組...