2015年2月27日金曜日

愛着理論とは何か? ~育児における感情的な結びつきの重要性~

■愛着理論とは?


愛着理論は、特に長期間にわたる関係性や絆にフォーカスしている。たとえば、親と子の関係や配偶者などパートナーなどだ。英国の心理学者ジョン・ボウルディがはじめて提唱した。彼は、愛着を”人間のあいだに横たわる永続する心理的結びつき”だとした。

ボウルディは、母親から子供が離されたときに感じる不安や苦痛に興味があったり、当時の行動主義の学者は愛着は食事を与えることで生まれるものであると考えていたが、結局は、食事を与えることだけでは不安はなくならなかった。心理的な結びつきが重要だったのだ。




■愛着とは?


愛着とは何か?愛着は他者との感情的な結びつき・絆のことである。

ボウルディは、生まれた直後に介護者と結ばれた結びつき・絆は人生を通じて大きな影響を与えることを発見した。そして、愛着は子どもが母親に近づくことで生存率も高まるのだと考えられるようになった。


■愛着の4つのスタイル


その後、ボウルディの研究を基礎としてエインズワースは、大きく3つの愛着スタイルが存在するとした:安定型、抵抗/両価型、回避型だ。その後、メーンとソロモン(1986)によって、「混乱型」が加えられた。

エインズワースの研究は多くの学者に引き継がれることになった。


■愛着の形成段階とそれを促すもの


シャファーとエマソン(1964)は多くの愛着関係を分析し、愛着には4つの段階があるとした。①前愛着(生後3か月まで)、②愛着形成(生後7か月まで)、③明確な愛着(生後7~11か月)、④多様な愛着(生後9か月以降)である。

このプロセスは直線的に形成されるとは限らず、いつどのように愛着が形成されるかには多くの要因が関係している。

そのひとつは、愛着に触れる機会があるかどうかだ。孤児院で育てられたような、母親に触れられていない子供は信頼感をおぼえることはない。

母親がすぐに、安定的に応答してくれたとき、頼ってもいい人がいるということを子どもは悟るのだ。そして、それが愛着形成の基盤になる。


母親がそばにいること、そして、母親が安定的にすぐに応答してくれるということは愛着形成には欠かせないのである。



思想を体現する。


【参照元】
What is Attachment Theory ? The Importance of Early Emotional Bonds
http://psychology.about.com/od/loveandattraction/a/attachment01.htm

2015年2月25日水曜日

愛着障害を乗り越えて。 ~安全基地( Secure Basement )~

■第三者が愛着修復のカギ

愛着障害を乗り越えていくためには、第三者のかかわりが不可欠だ。その第三者が、親がこれまでにしてくれなかったことを、一時的に、場合によっては数年単位、一生つきあうつもりで肩代わりすることが求められる。

そうして、傷ついた愛着を少しずつ修復し、安定型の愛着を持てるようになるのだ。




■安全基地という概念

そして、その第3者、特に相手のパートナーがとるべき役割として重要なのが、安全基地(Secure Base)という概念だ。

安全基地とは、いざとなったら頼ることができ、守ってもらえる居場所だ。そして、外の世界を探索するためのベースキャンプでもある。


安全基地(Secure Base)は帰りたくなったら戻れる場所だが、いつもそこに縛られる必要はない。良い安全基地になるためには、本人自身の主体性が尊重され、彼らの求めや必要などにこたえるというスタンスが基本なのである。

安全基地は彼らが傷つくことを守り抜くためのものではない。

むしろ、安全基地(Secure Base)は、本人が望めば、傷つく可能性があっても自由にさせ、傷つき戻ったときに受容するという態度である。あくまでも、彼ら自身の主体性を尊重するということだ。

安全基地が持てない障害といえる愛着障害を克服するためには安全基地がぜひとも必要なのだ。


■絶え間ない愛情を注ぐこと

幸いにも、安定した愛着の持ち主に出会い、変わらぬ関心と愛情を注ぎ続けられた人は、徐々に愛着の傷が修復される。愛着障害を克服する最大のポイントは、安定した愛着により、変わらない愛情を注ぎ続けられるということなのだ。

支える側はこれまで述べたことを意識して向き合うこと。


■よい安全基地の条件

よい安全基地の条件は4つある。①安全感の保証、②感受性、③応答性、④安定性である。支える側は、とにかく相手が安心を感じられる場所でいよう。そして、相手の心の機微をよみとり、求められたらすぐに手を差し伸べられるようにしよう。そして、最後に、傷が癒えるまで安定的に支え続けよう。



この数日間、愛着障害を考えてきました。おそらく、結婚生活、仕事、友人との関係という人を取り巻く3大要素の中で、この問題は大いにかかわっていると思います。その問題は、そうたやすくは修復できない。そして、その原因の発端は生後、1年半のうちに形成されるもの。引き続き注目していこう。




思想を体現する。

2015年2月24日火曜日

人から離れたい、人が疎ましい人。 ~回避型の愛着障害~

■回避型愛着障害が少子化につながる

愛着障害の”回避型”は、不安が強いとか人を求めすぎるというよりは、親密な信頼関係や持続的な責任避ける傾向が強い。

だから、結婚とか子供をもうけるといったことに尻込みしてしまう。これは、生物学的な営みに影響を与えるという意味で、少子化にも通じるところだと思う。




■愛する、愛されることを回避する

愛着障害の”回避型”の人は、周囲の人間からよそよそしく映る、そして、冷たい。うまく愛されなかったことが心の傷となり、では、愛されること、親密になることを避けてしまおうというのが、”回避型”になってしまう背景だ。

他人は当てにならないと思っている傾向が強いのもそのせいだ。


だから、問題やトラブルが起きてもひとりで抱え込んでしまい、人に相談したりしようとしない。でも、愛着障害の”回避型”の人も強いわけではない、結局、その状況や問題そのものから逃げてしまおうという結論になってしまうのだ。そして、ひとりで心を閉ざし、建設的な問題解決に取り組めない。

情緒的な面をおさえることは強みになることもある。実際、”回避型”は悩みがあっても仕事や趣味に集中することができる。だから、情緒的な問題がからまないことのほうが向いている。


■感情を抑えるから自己開示ができない

これだけ自分の感情に抑圧しているため、もちろん自己開示や感情表現が苦手である。

愛着障害の”回避型”の人は、「自分の気持ちを言ってみて」「自分が感じたことを話しなさい」と言われると、とたんに言葉を失ってしまう。自分の感情さえわからなくなっているケースも多い。

親からの共感的な応答が不足した状態で育ってしまったということがそれに起因している。

実際、それは”回避型”の人にも影響を与えている。”回避型”の人は実は他者の感情をただしく読み取り、それに共感をおぼえて認めるという力が弱い。それは、親が自分自身の気持ちを共感的に映し出してくれなかったことによって、感情というものを学ぶ機会が失われてしまったから。


■自分が無力であることを学習する

人は傷ついた状況を回避する修正をもつということを忘れてはならない。マーティン・セリグマンが言った「学習性無力感」も同じだ。傷つけば傷つくほど、その人は失敗を恐れ、自分から愛を求めるようなことはしなくなる。

これは少子化を代表とした社会の問題に直結すると思うのである。




思想を体現する。

2015年2月19日木曜日

人から好かれたい、人が怖い人。 〜不安型の愛着障害〜

■人を過剰に求めてしまう人

愛着障害の”不安型”は、誰かの支援や支えを必要としたときに、それを過剰に求めてしまう。ずっとそばにいてれたり、話をしてくれないと不安でたまらなくなる。

その理由は、”不安型”の人は、ネガティブな記憶が過剰に思い出される一方で、ポジティブな記憶がなかなか活性化しないことによる。




■要らなくなったら急に敵意をむきだす

また、”不安型”の人はパートナーからの支えが必要としているうちは怒りが抑圧されるが、必要としなくなった途端、怒りが爆発するという傾向がある。嫌われることが怖くなくなったから、急激に敵意が生じるのだ。

なぜなら、純粋に相手を求めていたのではなく、自分を守るためだったからだ。


■仕事の質や成果よりも人からの評判重視

仕事においても”不安型”の人は愛着に関連した行動をとる。仕事上で大きな成果をあげたか、とか、貢献できたかという視点よりも、いかに周りから必要とされるか、あるいは拒否されるかといった対人関係上の問題に焦点があたりがちだ。

肝心な仕事自体がおろそかになることもある。


■人の感情に過敏な”不安型”愛着障害

愛着障害の”不安型”の人の関心は何においても、人間関係なのである。社会との関係が途切れてしまう死に対する恐れがおおきいし、相手の表情に対しても非常に敏感だ。

自分が愛されているか、嫌われていないかをしきりに気にしてしまうのだ。それだけに日常生活でエネルギーを必要とする。


■嫌われたくないから逆らわない

”不安型”の人の関心が人間関係なだけに、人に逆らえないということもよく起きる。八方美人がその典型だと思う。彼らは、ちゃんと空気を読み、決して場を濁すことは言わないし、怒ったり、逆らうこともない。だからこそうまく使われてしまう。だから、余計にストレスがたまってしまう。


■人に好かれたいから、人が嫌いというジレンマ

そんな”不安型”の愛着障害の驚くべき特性は、他者を求めている一方、不安をかきたてるもの、うっとおしいものとも思っていて、アンビバレントな心境と絶えず同居しなければならない。

人が大切だからこそ、それに囚われてしまっているのだ。結局心のモヤモヤはなくなることはない。

恋人と離れたくても離れられない人。

そういう人は、特に、人が好きでもあり、嫌いでもあるという両価的な葛藤・ジレンマに悩まされている。


■あなた自身があなたを認めてあげること

重要なのは、まずは自分で自分を認めてあげること。寝る前に、「今日も頑張ったね。お疲れさま。」と声をかけてあげること。自分をいたわること。



思想を体現する。

2015年2月18日水曜日

愛着からみる心理スタイル 〜安定型と不安定型〜

愛着障害を考える際の愛着スタイルには大きく3つのカテゴリーがある。

安定型、不安定型(不安型、回避型)の3つだ。




■安定型の対人関係

安定型の人は、対人関係や仕事において高い適応力を示す。人とうまくやることはもちろん、深い信頼関係を築き、維持していくことで人生は充実したものになる。

安定した愛着スタイルを持つ人は、相手を信頼しきっているので、すぐに助けや慰さめを求めることができる。それも、適度に。


■不安定型の対人関係

しかし、不安定な愛着スタイルを持つ人は、そんなことをしたら相手から嫌われるのではないか、あるいはバカにされるのではないかと恐れ、素直にそうすることができない。

不安定型(不安型や回避型)の愛着スタイルを生む要因の一つは、親から否定的な評価を受けて育つことである。むろん、そのように育った人は、自分自身に対する信頼感や有能感は低い。


■安定型の怒り

安定型の人が怒りをあらわす場合、しばしばそれは建設的な目的に向けられているケースが多い。相手を簡単い嫌いになったりせずに、関係がうまくいかなくなった理由そのものに怒りは向けられる。

こうして、さらに人間関係を強化したり維持したりしていく。


■不安定型の怒り

逆に、不安定型の人は相手そのものに敵意を向ける場合が多い。そのため、一度、敵意が表面化してしまったら、その修復は難しいことも多い。破壊的にしか働かない怒りを「非機能的怒り」と呼ぶのらしいだが、不安定型の人に多いという。

そうして、構築されかかった関係を壊してしまう。

「非機能的怒り」にみられやすい特徴は、傷つけられたことに長くとらわれてしまうこと。過剰に傷つけられたことに反応し、思い込みも激しいところがあったりする。

そのため、過去と同様に傷つけられたりした場合、その人を敵だとみなしたり、その逆は、理想の人だと思ったり白黒思考も強い。


■愛着スタイルによって変わる行動

このように愛着スタイルによって取る対人行動は変わります。安定型は生産的で、かつ深遠な人間関係をつくることができるいっぽう、不安定型は破壊的で、息苦しい人間関係を作ってしまうことになります。

「人の可能性を拡げる」ということにかかわる立場として向き合っていく課題だと感じています。




思想を体現する。

2015年2月17日火曜日

心の安定をもたらす”愛着”とは? 〜人が成長するために必要なもの〜

■愛着の重要性

愛着がなぜ重要なのか。

愛着は、幼い時期の母親との関わり、さまざまな対人関係を経験する中で確立され、単に心理学的というだけでなく、生物学的な特性でもあるからだ。

母親に抱っこされるという身体的な接触や結びつきが、子どもの成長に不可欠であることが明らかにされている。




■子どもは愛着なしでは育たない

イギリスの精神医科ジョン・ボウルヴィは、戦災孤児の調査でそのことを明らかにした。

孤児たちは、どんなに栄養を与えてもうまく育たなかったのである。母親を失うことによって子供が抱える異常な状態を、当時、「母性愛剥奪」という概念で捉えていた。


■不特定多数の愛着は意味がない

その後、さらに重要なこととしてわかったことは、愛着には選択性をもつということだった。

つまり、不特定多数の人からスキンシップや接触があればいいという訳ではなく、愛着した人からのスキンシップや接触でなければ、心理的な安心感は生まれないのであった。


■愛着のタイムリミット

その愛着はいつまででも育まれるものではない。生まれてから1年半、せいぜい2年までがタイムリミットだと言われている。

愛着が築かれなかった動物の赤ん坊では、大人になってから脳を調べると、受容体の数や神経線維の走行に明らかな違いが認められ、ストレスに対して過敏な傾向を示すという。


■経済合理性が愛着を殺してきた

ここ数十年、愛着というものが軽視されてきた。それは、現代の産科では子供が生まれて間もなく親と離されるが、それは哺乳類では唯一人間だけである。

動物的で原始的な感情であり、経済的豊かさといった近代的な課題と比較して、単なる心理的な問題で、大して重要でないと考えられてきてしまった。


■愛着を損なわない社会の構築を

愛着は、単なる心理的な問題などではなく、生存を支える仕組みとして非常に重要なものであるということを改めて確認することが重要だと思う。

そして、これから女性の就業率の向上が予測されるということを考えると、この愛着の問題も含めて、社会の再構築をしていく必要性があると思います。




思想を体現する。

2015年2月16日月曜日

社会問題の巣窟!? 〜愛着障害を考える〜

■社会問題の巣窟”愛着障害”

結婚率や出生率の低下、離婚率の上昇、人口減少、子どもの虐待、ネグレクト、頻発する子どもの非行、うつ、依存症、摂食障害……。

こうした問題の根底にあるのは、愛着障害と呼ばれるものなのではないかと思い至るようになった。

生きづらさを抱えている人が増えているのではないかと思うのだ。




■愛着障害の人たちの生きづらさ

愛着障害を抱えた人たちは、端的に言えば、親にうまく育てられなかった人だ。

うまく人とやっていくことが苦手で、深い信頼関係を築くことができず、いつもどこかで孤独や自己不信感を抱えている。

親や配偶者でさえ当てにできす、本人は気づいていなくともその闇は深い。

なぜ、気ばかりつかってしまうのか。なぜ自分をさらけ出すことに臆病になってしまうのか。なぜ、本心を抑えてでも相手に合わせてしまうのか。なぜ、拒否されたり傷つくことに敏感になってしまうのか。なぜ、甘えたいのに意地を張ってしまうのか 。

そんな悩みを愛着障害の人は抱えている


■身近な人も悩んでいる愛着障害

成人でも3分の1の人が、愛着障害を抱え、また、カップルのどちらかが不安定な愛着スタイルを抱えている率も約50%とも言われている。

これだけ身近な苦悩でありながら、愛着障害は多くの人に認知されるものになっていない。


■気づかれない愛着障害

その理由は、配偶者など、深い関係にならなければ気づきにくいということと、本人が生きづらさを感じてても、その理由を本人自身も自覚していないケースがほとんどだから。

この問題は生活習慣病に近いと思う。気づかぬうちにその病は進行し、気づいた時にはもう末期の病に変貌を遂げている。

愛着障害は、若者の草食化、離婚率の上昇、女性の就業、少子化、シングルマザーの増加と貧困、様々な課題に関連づけられる。

この問題は、目に見えにくいものだからこそ、改めて注目していく必要性があると思う。



思想を体現する。

2015年2月15日日曜日

相手に変化をうながす3つのポイント ~カウンセラーが心がけるべき態度~

■自己主張的ノウハウは一時しのぎでしかない

最近、この手の相手を変える、あるいは影響を及ぼすとなると、プレゼンテーションとか、うまく相手を動かす◯◯な方法とか、どちらかというとどうやって説得するか、説き伏せるか、といった自己主張的ノウハウものが多い。

でも、それは一時しのぎでしかない。

なぜなら、相手の本当になしとげたいこと、やりたいことは達成できていないからだ。できたことといえば、自分自身の欲求を貫きとおしたこと、そのテクニックが有効性があったかを確認できたこと、そういた自己本位的なことだけだろう。

この自己本位的なコミュニケーションがまかりとおることで、人と人との協力関係が希薄いなるのではないか、と危惧している。




■カール・ロジャーズの3つの要素

対人関係において変化を引き起こすのに重要な三つの要素を、カール・ロジャーズは、「正確な共感性」「非支配的な温かさ」「誠実さ」だと述べた。

これらの三つの要素で表されるような受容的な雰囲気が、人の心を解きほぐすのであり、変わろうとする意欲を生じさせるためには重要なのである。

決して自己本位的ではないスタンスであることはすぐにおわかりだろう。


■「正確な共感性」とは

「正確な共感性」とは、ただ同情したり、相手に感情移入することではない。

重要なのは、ある程度客観性や中立性を保つことである。相手の立場や心情を正確に把握し、気持ちを汲みとるということができないといけない。


■「被支配的な暖かさ」とは

「非支配的な温かさ」の「非支配的」とは、押しつけないということであり、相手の自由な主体性を尊重するということである。

いづれにしても発言は控えることが重要だ。あくまで聞き手にまわって、相手の意思を誘導するようなことがあってはダメだ。大切なのは、相手の意思を尊重すること。


■「誠実さ」とは

「誠実さ」とは、自分自身を偽らないということだ。カール・ロジャーズは「私が本当の自分自身でないように振る舞うならば、結局それは援助にはならないことに気づいた」と述べた。


■「誠実さ」とは自分自身が変わる覚悟をもつこと

カウンセラーが当事者になってしまうとカウンセリングが難しくなってしまうのはこのためだ。

本当に「誠実さ」をあらわすためには、時には自分自身が変わらなければならないし、その覚悟が必要だ。きっと、相手の変化を支援したければ、まずもって、自身の変革が必要。そういうことなんだろう。


思想を体現する。

2015年2月12日木曜日

対話・ダイアログが秘める驚くべき可能性を育む 〜対話の2つの役割〜

■対話がもつ驚くべき可能性と陥穽

対話は驚くべき可能性を秘めている。

やる気のないうつのサラリーマンを職場に復帰させるのも、学校に行けなくなった子供が再び学校に行くようになるのも。

その変化を媒介するのは対話なのだ。

しかし、対話は使い方を間違えると悪い結果にもつながる。
会社に行きかけたサラリーマンがまた会社に行けなくなったり。

対話の仕方ひとつ間違うだけで、簡単に起きてしまう。
その意味で、対話は諸刃の刃ということになる。




■対話の2つの役割

対話には大きくふたつの役割がある。

ひとつめが「安心感を高める」、ふたつめは「思考を練り、高める」ということである。

支援という場において、双方の安心感は欠かせない。そもそも、その安心感というものがなければ純粋な意味での支援を求めたり、与えたりすることはできない。


◼︎カール・ロジャーズのクライアント・センタード・アプローチ

カール・ロジャーズは、本人が自分自身の言葉で、自分が話したいように話してもらうことが、カウンセリングにおいて最も効果が高いことに気づいた。

これは、支援側にある人間は、意図を持った質問を行ったり、アドバイスをしたり、問題を突き止めようとしてはならないということ。

相手の言うことを受容するとともに、言葉を返すときも、相手が言ったことをそのままなぞり返してみたり、その話を要約してみせて、「あなたの言いたかったことはくゆうことですか」と本人に確かめる。

相手の想いや価値観を共有しない限り、相手の安心感は醸成されない。


■マズローの欲求段階説との関連

こう考えていくと、マズローの欲求段階説と近いところがあると思う。

相手の安全欲求が満たされていなければ、自己実現に向かう道程への支援をおこなうことはできない。支援関係にあっては、安心感を醸成できてはじめて、お互いが手を取り合って前進していくことができる。


■対話を通して支援をしたいと思っている人へ

責任感や支援者としてどうにかしてあげたい、という想いが強ければ強いほど、問題解決をしようとしてあげたり、アドバイスをしたくなるものだ。

話を聞いて共感してあげるということは、時には自分が意図したいことや問題解決に向けた道筋とは大幅にかけ離れた話に付き合うこともあるだろう。

ただ、ここをグッとこれえて相手の関心を共有してあげることが、今後の支援の質をずっと上げていく近道なのだ、と、カウンセラーや支援をしてあげたいと思う人は言い聞かせなければならない。

支援したくとも、相手が助けを必要としていないのでは、まるで意味がないのだから。

そして、相手がわたしたちを信頼し、心を開いてもいいのではないか、と思ってもらうために安心感を醸成することが必要なのだ。


カウンセラーや支援者は、「受動的に聴く」ということを「積極的に行動にうつす」ことが必須である。



思想を体現する。

2015年2月10日火曜日

褒めることのデメリット!? 〜褒めることは誘導につながる〜

■褒めることのメリットとデメリット

他者の自己実現を支援しようと思った場合、褒めたり、肯定的な応答がポジティブな影響を与えるのは間違いない。厳しいことや否定的なことをは受け入れがたいのは誰でもわかるだろう。

気をつけないといけないのは、褒めすぎるということが人の自己実現を妨げてしまうことがあるということだ。

褒めすぎることは、強力な誘導になりうるということにつながる可能性がある。褒められるあまり、自分の意思とは別に、誰か違う自分を演じてしまう可能性があるということだ。




■褒めすぎることが相手の主体性を奪う

本人の主体性を歪めてしまうことにもつながりかねないのだ。

主体性が人の行動を最もモチベートし、促進するから、この主体性を歪めることは自己実現の支援とは程遠くなってしまう。

本人の主体性を尊重して意思決定を促すためには、どちらかいっぽうを褒めすぎたり、肯定的評価を使いすぎないことが重要である。


■いっさいの主観性や先入観を捨てる

これが、起きてしまう多くの原因は、支援者の主観が入ってしまうために起こる。「こうしたほうがいいのではないか。」「こうしたら問題解決できる」という主観的先入観が自己実現を阻害する。

こちらの主観ではなく、相手を多面的、客観的に見て、相手がどちらの方向に進みたいか、これを受容し、傾聴するのだ。


■支援の起点はいつでも相手の中にあることを忘れない

相手の自己実現の出発点は、いつの時でも、相手の中にあることを忘れてはならない。「人を変える」という支援者としての傲慢を捨て去らないければならない。



思想を体現する。

人生を決めているもの。住宅と街並みとぼくの視線から考える人生論。

  家づくりを検討しはじめて約2ヶ月。あれだけ回避していたローンのリスクを受け入れて、家を建てることに決めた。日本の一戸建ての寿命が30年のところ、90年もつ家を建てることを知ったのが大きなきっかけだった。90年もてば3歳の息子も死ぬまで住むことができるだろう。それならローンを組...