最近、この手の相手を変える、あるいは影響を及ぼすとなると、プレゼンテーションとか、うまく相手を動かす◯◯な方法とか、どちらかというとどうやって説得するか、説き伏せるか、といった自己主張的ノウハウものが多い。
でも、それは一時しのぎでしかない。
なぜなら、相手の本当になしとげたいこと、やりたいことは達成できていないからだ。できたことといえば、自分自身の欲求を貫きとおしたこと、そのテクニックが有効性があったかを確認できたこと、そういた自己本位的なことだけだろう。
この自己本位的なコミュニケーションがまかりとおることで、人と人との協力関係が希薄いなるのではないか、と危惧している。
対人関係において変化を引き起こすのに重要な三つの要素を、カール・ロジャーズは、「正確な共感性」「非支配的な温かさ」「誠実さ」だと述べた。
これらの三つの要素で表されるような受容的な雰囲気が、人の心を解きほぐすのであり、変わろうとする意欲を生じさせるためには重要なのである。
決して自己本位的ではないスタンスであることはすぐにおわかりだろう。
■「正確な共感性」とは
「正確な共感性」とは、ただ同情したり、相手に感情移入することではない。
重要なのは、ある程度客観性や中立性を保つことである。相手の立場や心情を正確に把握し、気持ちを汲みとるということができないといけない。
■「被支配的な暖かさ」とは
「非支配的な温かさ」の「非支配的」とは、押しつけないということであり、相手の自由な主体性を尊重するということである。
いづれにしても発言は控えることが重要だ。あくまで聞き手にまわって、相手の意思を誘導するようなことがあってはダメだ。大切なのは、相手の意思を尊重すること。
■「誠実さ」とは
「誠実さ」とは、自分自身を偽らないということだ。カール・ロジャーズは「私が本当の自分自身でないように振る舞うならば、結局それは援助にはならないことに気づいた」と述べた。
■「誠実さ」とは自分自身が変わる覚悟をもつこと
カウンセラーが当事者になってしまうとカウンセリングが難しくなってしまうのはこのためだ。
本当に「誠実さ」をあらわすためには、時には自分自身が変わらなければならないし、その覚悟が必要だ。きっと、相手の変化を支援したければ、まずもって、自身の変革が必要。そういうことなんだろう。
思想を体現する。