2013年8月31日土曜日

社内SNS導入の前提〜健全な組織風土の醸成

嘘や媚が飛び交い、職場の誰が誰にどんな噂が広がるかわからない、BCCの乱用、自分は何もしないくせに文句やヒソヒソ話が多い職場。みなさんにもそんな経験があるのではないでしょうか。

透明性を高め、コラボレーション、イノベーションが起きると囁かれる社内SNSですが、本当のところはどうなんでしょうか。













【社内SNSはオープンな組織文化を生み出す訳ではない】
小生の経験談を元に話しをさせて頂きます。結論、社内SNSはオープンな組織文化を生み出すことはできません!!(バッサリ!!)

チャットだけはアンダーグラウンドで盛り上がり、タイムラインには組織からルール化され、仕組み化された情報しか飛んでこない。SNSを見てると、サボっていると噂される。こんなことが起こっている現場を目撃したことがあります。

賢明な方であれば、こんな使われ方をするコミュニケーションプラットフォームをわざわざ投資してまで使いたいと思う経営者はいないでしょう。

【社内SNSは社内のラウンジである】
では、こうしたことはなぜ起こってしまうのでしょうか。社内SNSのそもそもを考えてみましょう。小生は、社内SNSを会社のラウンジのようなものだと思っています。

久々に通りすがった同期との会話、会議の後に話が盛り上がり立ち話してしまう、会社の社長とバッタリ会い激励を受ける場です。もちろん、その場は愚痴や不満、社内のゴシップが溢れる場としても使われてしまいます。

【組織のオープンネスが試される社内SNSの導入】
このように考えていくと、そこで立ち話をしている主体の「心理的な状態」がポイントになりそうですね。

不満や非生産的な会話は、学問用語でいうと「防衛コスト」と言われます。自分を防衛する=他責にするという意味で防衛という言葉が使われています。これが組織に蔓延すると問題解決に繋がらないコミュニケーションが蔓延し、組織の生産性は低下してしまいます。

不満があれば、オープンに言う。あるいは、オープンに言えるマネジメント環境が組織の防衛コストを抑え、課題を直視し、生産性の高い組織と変わっていきます。組織は感情で動いているからこそ、その構成員の感情は満ち足りている必要性があります。


いかがでしょうか。

要するに社内SNSの成否は、使い手や導入組織のオープンネスに委ねられるということが言えそうです。では、どのようにしたら組織のオープンネスは高まるのでしょうか。

次回はその方法について考えていきたいと思います。

それではー。

社内SNSが人材育成の効率性を高める

今回は職場内学習と社内SNSを絡めた話をしていきたいと思います。

小生がお相手させて頂く中小企業経営者は、人材育成における時間が取れないということで大きなお悩みを抱えていらっしゃいます。普段のコミュニケーションを社内SNS上で行うことによってその糸口が見えてくるのではないかと考えています。



(1)経営の合理化策によって人材育成の余裕を失った職場

高度経済成長からバブル期の日本型年功制が崩れ始めてからもうどれくらい経ったでしょうか。経営の合理化策によって、効率重視の経営が続き、即戦力重視、プレイングマネジャー、といった言葉が人材ビジネス業界では飛び交っています。今や新卒5年から10年は人材投資としての猶予期間であるという考え方はもうほぼ崩壊していると言ってもいいでしょう。

2007年当時、いわゆる団塊世代を前に、「技術伝承」という言葉がメーカーを中心に飛び交い、私が属していた人材育成会社では「OJT研修」が一大トレンドになりました。OJTスキルが知らないのか、育てる時間がないのか、そもそも育てる意志すらないのか、その議論は置いておいても、転職採用ビジネスは盛り上がり、また、私がお伺いする企業様でも「次代を担う人材が育っていない」という声をお聞きします。

現実的に考えても、最近までトレンドであったFacebookやTwitterと呼ばれるSNS、iPodなど破竹の勢いで伸び続けるApple社、どれをとっても日本企業の名前は浮かび上がってきません。

「次のビジネスを育てる人材が育っていない」、というのはおおよそ間違いではないでしょう。そして、それが今回小生がBlogを書こうと思った理由です。次世代ビジネスリーダー育成の議論は、組織の制度、文化、新しい教育プログラムといった様々な問題が複雑に絡んでおりますので、ここでは割愛させて頂きます。むしろ、ここでは経営の合理化策によって失われてしまった「育成する文化」にもう一度、命を吹き込みたい、そして、その一助になるのが社内SNSではないか、ということを主眼にお話をさせて頂きます。

(2)『職場学習論』に見る職場学習の今

最近、小生が読んだ本の中に中原淳先生『職場学習論〜仕事の学びを科学する〜』があります。昨今の職場学習の今をインタビューやアンケート調査を元に明らかにした内容ですので、こちらを元に、今回の社内SNSがワークプレイスラーニングの間隙を埋めるということについて書いて行きたいと思います。

この中原氏の研究でわかったことは以下の通りです。
・人は職場において、「業務支援」「内省支援」「精神支援」という3つの異なる支援は他者から受けている
・上司の「精神支援」「内省支援」、上位者・先輩の「内省支援」、同僚・同期の「内省支援」「業務支援」が、それぞれ「能力向上」に奏功している
・1)成功経験談も失敗経験談も、いずれも、「業務能力」の向上に資すること、2)組織レベルの信頼が成功経験談と失敗経験談の業務能力向上に対する効果を押し上げる
ここで、注目したいのは「業務支援」は上司ではなく、同僚や同期が貢献をしていることであろう。普段接している時間が長い上司ではなく、同期・同僚の方が業務支援を行っているというのである。

小生自身の経験でも、同じ業務をしている同期の方が悩みが共有でき、役立つということもあった。あるいは、上司から部下への業務支援は、業務遂行能力のギャップがあり過ぎて、部下は理解しきれないということが現実的に起こっていると思います。

(3)人材育成効率化へのポテンシャルが高い社内SNS

小生のキャリアとしては、組織・人事コンサルティング業界での経験が長いのですが、約1年ほどソーシャルメディアマーケティングコンサルタントとして活動していた時期があります。その組織では、ソーシャルメディア、とりわけFacebookを使って日々のコミュニケーションが行われていました。

メールは基本的には会社規定の業務(週報や交通費精算)、お客様とのやり取りがほとんでした。それ以外のコミュニケーションは基本的にはSNSです。

この活動を通してわかったことは、コミュニケーションの早さです。例えば、僕が何かお客様事例を情報収集したいと思っていたとしましょう。そこで、ぽんっとFacebook上に質問を投げかけます。基本的に、社内の人間は頻繁にFacebookを見ていますから、すぐその返答が全社から返ってくるという仕組みです。

「経験学習」と呼ばれる理論があるように、基本的にビジネスパーソンはOJT、日々の業務から学びます。これを促進するのが社内SNSだと思うのです。SNSでは日々のコミュニケーションが気軽に、かつスピーディに行うことが出来ます。

メールだと、宛先指定が非常に面倒であり、コミュニケーションそのものがフォーマルなので、投げかける質問内容などもフォーマルに書かざるをえません。そういったことが障壁になって、メールは人材育成のためのコミュニケーションツールとしては使えませんね。

そういう意味で、社内SNS、今後も注目していきたいと思います。

それでは、また。

2013年8月29日木曜日

社内SNSによるコミュニケーションの陥穽 〜情報のセレンディピティ〜

今年の8月も終わり。みなさんの会社の新人の成長はどのようなものでしょうか?時々、新人のコミュニケーションに違和感を感じることってよくあります。「それメールで言う?」、「それ言うタイミング違うだろ」みたいな。小生は結構感じるところです。

小生の関心のある社内SNSにおいても、そこで取るべき情報の種類というものがあると思います。どのようなコミュニケーションにおいて社内SNSを使うといいのか、そんなことを考えてみました。















【社内SNSは万能コミュニケーションプラットフォームではない】
YammerファンBlogを自身が運営していた経験の中で、コラボ、学習、情報の流通など組織へのインパクトに関して非常に強く期待をしている一方で、何だか取り違えているように思うことがあります。

それは、何でもかんでもSNS上てやり取りをし、コミュニケーションの質が下がるのではないかという一抹の不安だ。

【重要性が高く緊急性が低い情報は対面で】
対面でじっくりと話し、お互いの価値観を共有し、深いコミュニケーションを取るべき情報とはどんなモノだろうか。例えば、組織内で言えば、従業員のキャリアや従業員同士の信頼感の情勢、組織、チームのミッションやビジョンなどがあると思います。人間の心理や感情が絡む話はやはり対面のコミュニケーションがいいと思うのです。組織は感情で動いている、とはよく言われたものですが、個人の感情が活発化されていない組織にいくら社内SNSを導入しても意味がなくなることは、何と無くわかるでしょう。

よく社内SNSでリアルタイムコミュニケーションを!といった言葉が聞かれるけど、それは効率や手っ取り早さという利便性を高めているだけで、決してコミュニケーションの質を高めている訳ではないということです。

【社内SNSに流通させるべき情報とは】
今すぐに共有した方がいい、あるいは、その方が価値が高まる情報もあります。特に、突発的な課題や質問事項のの発生、簡単な日々の共有もあるだろう。ふと思い立って時間が経てば忘れてしまいそうな情報のシェアなどはその範疇に入ってくると思います。緊急性が高く重要性がそこまで高くない情報の種類です。

社内SNSのコミュニケーションとはこういうものなのではないでしょうか。情報のセレンディピティとでも言いましょうか。情報は発信しなければ何が起こるかわからない。そんなところに、社内SNSのコミュニケーションによるイノベーション、コラボレーションという価値が生じるのではないかと思います。

【社内SNSの有用性を明確に】
僕の問題意識はSNS、Facebookやヤマーのテクノロジーや流行といった作用に流されて、感情が表出されにくいコミュニケーションが蔓延しているのではないかということです。

「テクノロジーは基本的に人間の拡張機能である」というその言葉にあるように、テクノロジーに議論が偏り過ぎると感情を含んだコミュニケーションの本質が見過ごされて行くような気がしていてならないのであります。

社内SNSは確かに有用ですし、使い方によっては様々なメリットを見出してくれることでしょう。

血の通ったコミュニケーションを忘れないでいたいですね。

ではでは、またー。




2013年8月28日水曜日

本当に御社に人事制度は必要ですか??

最近、人事評価制度の策定や改訂のお話を急激に受けています。この背景は、各社各様で「社員からそういった声があがった」、「新卒採用もはじめ、組織構築を今後行っていくうえで、納得性の高い評価制度を作りたい」といったものが多いです。人事評価制度は会社の求める人物像をシステムとして明示したり、目標管理を行って効率的に成果をあげる、あるいは人事制度運用を行うことで管理職のマネジメント力を底上げするといったようにメリットも多いです。ただし、外部に人事評価制度構築を外部に委託する場合は注意するべき点がいくつかあると考えています。
















【人事評価制度が必要になる組織規模】
小生が中小企業を回る中で、1番人事評価制度のニーズが多いのが50名規模のお客様です。理由としては、大体この規模で社長の目が現場に行き届かなくなるのと同時に、新卒採用をはじめるタイミングです。反対を言えば、それよりも小さな組織で言えば、基本的には人事評価制度は必要のないことの方が多いのではないのかと思います。

【小規模組織になぜ人事評価制度は必要ないのか】
50名を下回る組織では、基本的には社長が現場に目が行き届くことが多いので、仰々しい人事評価制度の必要性は低いのではないかと考えています。実際問題、100名に近い組織でも社長の鉛筆なめなめで評価している組織も存在しています。それでも、業績に致命的な課題はなく組織は回るのです。外部に策定を委託する場合は、経営課題に大きなインパクトを与えているのみがいいと思います。しかも、一回作るのに200〜300万はくだらないですし、人事評価制度は作る労力がかかる一方で導入した時点で陳腐化してしまいます。今後、組織の拡大が見込める組織は特に制度構築に投資するべきではないのではないのでしょうか。

【人事評価制度よりも目標管理をまわす】
最近は、10〜20名程度の組織の社長さんより同様のニーズをお聞きするのですが、小生必ずといっていいほど人事評価制度構築はお断りしています。変わりに提案するのが目標管理制度の導入です。社長と従業員が目標設定面談をもち、日頃の指導、評価面談を実施する。目標に対する達成度の基準を作成し、達成度ごとの昇格、昇給をざっくりとでもお互いに握り合っておけば大きな問題は起きません。従業員は体裁だけがいい制度よりも、自分の声が届いているということの方が喜ぶと思います。それは、社長と1対1の面談で実現されますね。

そういう意味では、最近はやりのエンゲージメントは組織運営にも適応できる概念だと思います。

いかがだったでしょうか?
人事評価制度導入にもいろいろと考える視点があったと思います。

ではでは、また次回のBlogで。

2013年8月27日火曜日

教育計画策定の5つのステップ

中小企業経営者とお話をしている際に、結構よくある話は、「人材育成投資をしたい気持ちはあるが何から手をつけていいかわからない」といったものです。じゃあ、優先順位をつけましょう!と言うのは簡単なんですが、それ以外にもいくつか考えるべき視点があります。本ブログではこのテーマについて書いてみたいと思います。
  1. まずビジョンや経営計画・課題の確認
  2. 我が社に求められる人材要件や人材像の設定
  3. 人材育成対象・テーマの優先順位付け
  4. 実施方法の決定
  5. 人材育成プログラム内容の決定














【①ビジョンや経営計画・課題の確認】
まず我が社が掲げているビジョンや経営計画の確認を行います。当社が何を目指しているのか、経営の根幹となる方向性やそれにまつわる課題などを改めて可視化します。人材育成というとその施策自体が素晴らしいもの、いいものと認識されてしまうため、ドラッカーの言う「顧客の創造」という経営の目的を見失った育成方針を考えてしまいがちです。

【②我が社に求められる人材要件や人材像の設定】
経営や組織が向かうべき方向性が決まったら、ここから人材の話に入っていきます。そこへ行き着くための人材ってどんな人なんだろうってフェーズです。全社員に求めたいこと、職種、階層でいろいろと出てくると思いますが、ここはブレストフェーズとしてどんどんと出していくといいと思います。おそらく、数えきれないほどのテーマが出てくると思いますが(笑)

【③人材育成対象・テーマの優先順位付け】
ここからが育成対象者や育成テーマの絞り込みのフェーズに入ってきます。ここで、重要なのは組織が成果を最大化するための鍵を握っているのは誰で、その人が何ができるようになっていればいいのかという視点です。厳密には、1995年を境にアメリカを中心として広がりはじめたパフォーマンス・コンサルティングという手法を適用するのが1番の方法ですが、ここでは割愛します。要するに、

「誰が何をできるようになれば組織の生産性が最大化するという視点」が重要です。

【④実施方法の決定】
育成対象やテーマが決まったら、教育研修の実施方法ですね。投下できる予算や割けるマンパワーを勘案しながら検討を進めていきます。具体的には下記の方法があると考えています。

・コンサルタントを社内に招聘して実施
・社員が公開型のセミナーに参加する
・定額制研修を利用する
・社内勉強会を実施する
・OJTだけで育成する

上記の方法の中で1番適切だと思う選択するといいと思います。

【⑤人材育成プログラム内容の決定】
外注するのであればいくつかの教育研修会社を探します。社内実施であれば、教材や育成スケジュールをすべて一から考える必要性が出てきますので、手間がかかります。根気強く教育担当を決めるなりして進めていきましょう。

また、人材育成プログラムを考える際は、事前と事後のプロセスも考慮してプログラミングをしましょう。教育効果測定の研究者ブリンカホフ氏が言うように、えてして研修の内容ばかりに気が取られがちですが、本当に重要なのは、事前のマインドセットと事後のフォロー体制の仕組みです。研修のコンテンツだけに捉われないようにしましょう。逆に、研修内容の凄さばかりを強調してくる教育研修会社はあまり効果を重視していないということが言えるので、留意しましょう。

いかがだったでしょうか。

すべてのはじまりは、「顧客の創造」のための人材育成投資です。また、研修内容ではなくその事前時後の仕組みであることを認識しながら、計画を進めていけばうまくいくのではないかと思います。

それではー。

2013年8月25日日曜日

教育研修効果を最大限高めるための3つの視点

教育研修というのは非常に効果の見極めにくいサービスですよね。大体、教育に乗り気ではない中小企業経営者のみなさんは、「本当に意味あんの?」「効果もろくにわからないのに高い」と内心(?)思っているケースが多いと思います。



この教育の効果測定の問題は「永遠のテーマ」というほど、根深い課題です。教育効果測定で言えば、カークパトリックの4段階モデルやジャック・フィリップスの5段階モデルが有名です。

ざっくり言えば、受講者アンケートが良かったか、知識は身に付いたか、行動は変わったか、行動が変わって組織の生産性があがったか、といったような議論です。問題になるのは行動が変わるまでのプロセスです。知らなかったから、わからなかったからできなかった!であれば、知識を吸収、定着させることで解決ができます。

わかっていても行動が変わらない!これが一番の中小企業経営者の皆さんや人材開発担当者の悩みどころではないでしょうか。

理解できたから行動にうつす!これができる人は非常に優秀です。おそらく、学習の機会さえ与える、もしくは学習意欲が高い方ならほっておいても伸びていくでしょう。

さー、こっからが本題です。頭ではわかっているのに行動が変わらない。こういう人は何が足りないのでしょうか。小生は3つの要因があると考えています。順を追うごとに解決の難易度は難しくなると考えて下さい。

  1. 使いこなせるまでに至っていない(技能)
  2. そもそも行動にうつす気がない、必要性がない(態度)
  3. 行動にうつす必要性、重要性がない(環境)

【使いこなせるまでに至っていない(技能)】
これは反復練習を強化することによって解決が出来ます。小生がよく話をさせて頂くのは「頭でわかっていることと出来ることは全くの別物である」ということです。最近、小生はゴルフにはまっているのですが、これも同じです。理論は理解をしていても、身体がそのように動いてくれるとは限りません。実践を通して、身体で覚えていくことが必要です。

【そもそも行動にうつす気がない、必要性がない(態度)】
個人に学習した内容そのものに心的抵抗を示しているケースです。よくある話は、営業マネジャーが下を育てるつもりがなく、自分自身で数字を稼ぎだしているため、後進が育っていないケースなどはよくお聞きすることです。この営業マネジャーは、過去に部下育成で手痛い失敗をした、あるいは、自分自身で動いた方が業績が上がる経験をしている可能性が高いです。その場合には、今一度、過去の失敗に対する内省から行動変容を促すアプローチを追加でするか、中長期的に見て部下育成が如何に重要か、営業マネジャーに再度期待役割を理解してもらう必要性があります。

【行動にうつす必要性、重要性がない(環境)】
人材開発担当者が現場の方針を正確に把握していない時に起こりやすいパターンです。研修内容が現場で求められているものと合致していなければ、もちろん研修受講者は行動に移そうとする理由はもはやありません。経営戦略と人材戦略との整合性をはかる施策が必要になります。

いかがだったでしょうか。教育効果の最大化は重要な経営テーマでもあります。上記のポイントの3つの観点からぜひ考えてみると、何かしらのヒントが得られるのではないでしょうか。

ではでは。

2013年8月15日木曜日

『ワーク・シフト』〜連続的技能の習得〜組織開発の行方

最近、一番の小生のお気に入りの書籍です。
特に、連続的専門技能の習得は今後、非常に重要になるのではいかと考えています。

小生は、組織開発や社員教育の業界に身を置いていますが、そもそも組織自体の数が減っていくのではないかと考えさせられます。組織開発は、対象となる組織が減少、あるいは組織とは呼べない集団レベルのグループが増加するのであれば、それこそ小生はいまから新しい専門技能を身につけなければいけないということになります。

関連分野としては、下記にもまとめた①イノベーション・創造性関連、②コーチング・ケア関連なのかなと考えております。対象は、集団レベル、あるいはクラウドコミュニティ、個人という3パターンがあるのではないかと考えています。

小生の独り言は置いておいて、内容を遅ればせながらシェアしますね。


■未来を形づくる五つの要因
  1. テクノロジーの進化
  2. グローバル化の進展
  3. 人口構成の変化と長寿化
  4. 社会の変化
  5. エネルギー・環境問題の深刻化
■仕事の世界で必要な三種類の資本
 ①知的資本
  -知識と知的思考力
  -専門分野の知識と技能
  -専門技能の連続的習得
 ②人間関係資本
  -人的ネットワークの強さと幅広さ
  -多様性のある人的ネットワークがイノベーションと創造性を促進
 ③情緒的資本
  -自分自身についての理解
  -自分のおこなう選択について深く考える能力
  -勇気ある行動を取るために書かせない強靭な精神を育む能力

①知的資本:第一のシフト
■ゼネラリストから「連続スペシャリスト」へ
【これまでの前提】
ゼネラリストと会社の間には、社員がその会社でしか通用しない技能や知識に磨きを
かけることと引き換えに、会社が終身雇用を保障するという「契約」が存在した

 -最大のライバルはWikipediaやGoogleアナリティクス
 -専門性の低いゼネラリスト的なマネジメント技能は、特定の企業以外で通用しない

■連続スペシャリストへの道
 -ある技能がほかの技能より高い価値をもつのはどういう場合なのか
 -未来の世界で具体的にどういう技能が価値を持つのか
 -未来の価値ある技能を念頭に、自分の好きなことを職業を選択
 -専門技能の徹底的な習得
 -移行と脱皮を繰り返して他の分野に転進する

■高い価値をもつ専門技能の三条件
 -その技能が価値を生み出すことが広く理解されていること
 -その技能の持ち主が少なく、技能に対する需要が供給を上回っていること
 -その技能がほかの人に模倣されにくく、機械によっても代用されにくいこと

■未来に押しつぶされないキャリアと専門技能
 ①キャリア
  -草の根の市民活動
  -社会起業家
  -ミニ起業家
 ②専門技能
  -生命科学・健康関連
  -再生可能エネルギー関連
  -創造性・イノベーション関連
  →機械的・画一的な仕事に変わり、有機的・非計画的・創造的におこなわれる仕事の重要性が高まる
  -コーチング・ケア関連(自己再生のコミュニティの屋台骨)
  →バーチャル化が進む世界では、日々の生活の道案内を得て、自信をもって働き、多忙を極める
   スケジュールを乗り切るための支援が重要

■高度な専門技能を身につける方法
 -職人のように考える(「反復練習の効用」社会学者リチャード・セネット)
  1. 「場所」の重要性 学ぶべき点のある人たちのそばに身を置く必要性
  2. 専門技能獲得に必要な一万時間以上の時間確保
  3. 同様の技能をもつほかの人たちからの差別化  
 -子どものように遊ぶ
  チャランボス・マイネメリスとセーラ・ロンソン
  逸脱=普通はやらないことをする
  回避=普通やっていることをやらない
  強化=ものごとを普通より極端にやる
  逆転=社会生活の普通のパターンをひっくり返す

■キャリアの脱皮を成功させるコツ
 -新しいチャンスが出現した時、いきなり飛び込まずに新しい世界を理解するために実験すること
 -自分と違うタイプの大勢の人たちと接点をもち、多様性のある人的ネットワークを築くこと
 -はじめのうちは本業をやめず、複業という形で新しい分野に乗り出すこと

■移動と脱皮で専門分野を広げる
 -特定の専門分野の枠を超えた幅広い人的ネットワークの構築
 -自分自身で複数の専門技能を習得

■セルフマーケティングの時代
 多くのライバルがひしめきあう市場では、企業ブランドだけではなく、個人にとっても自分の
 「シグネチャー」を明確に打ち出すことが非常に重要
  1. 自分の仕事に自分の刻印を押すなり、署名を書き込む
  2. ギルド(同業者組合)やそれに類する組織をつくる
  3. キャリアのモザイクを描き、カリヨン・ツリー型のキャリアを実践する

2013年8月14日水曜日

MOOCから考える反転教室の可能性

久々のBlog。
最近は勉強どころではなく、メンバーのマネジメントやら業績管理とやらで忙しかったけど、夏休みに入って久々にBlogを書こうと思います。

最近、MOOC(massive open online course)が話題になるようになってきましたね。コーセラやカーンアカデミーという名前もだいぶ教育界には浸透してきたように思います。教育界に身を置く小生にとってみると大きな脅威になってくると感じています。

  1. コンテンツは完全無料
  2. 講義や知識はオンラインに移行
  3. なんでも、いつでも、どこでも

組織開発や人材開発を研修という形式を通して支援をしていくこれまでのビジネスモデルを考えると、「場」を通したサービスも変容していかないといけないと思います。また、同時に旧来から教育コンサル業界が抱える課題である、お客様から求められる「成果」に如何に応えていくかを考えるきっかけでもあります。

従来、教育コンサルティング業界は、大手企業の階層別研修を実施し、リピートをもらうという構造で儲けてきました。そうなんです。結局、やったらやりっぱなし。その後、どうなったかなんて気にも留めていません。研修の中で見えた課題を再提案することに終始し、現場での実践度合いやその組織の生産性寄与の程度など(わかっていても)気づかないフリをしてきました。

そういう意味では、今後教育コンサル会社も「成果」を徹底的に考えていかなければいけない時代に突入していくのではないか、というのが小生の予想です。採用ビジネスと同じですね。

ここでキーワードになってくるのが「反転教室(Flipped Classroom)」です。反転教室に関しては、東京大学大学院教授の山内先生が詳しくその取組みをされています。関連記事もすでに結構あります。

要は、授業はタブレットやパソコンから自宅で、教室ではディスカッションを通して議論を深める。現段階では、学生や塾などで展開されている現状ですが、これは社会人教育や企業内研修でも今後展開されるべきだと考えています。

学習コンテンツはMOOCのような形を取らなくても、Googleで検索をすれば莫大な情報収集をすることができます。ソーシャルメディアで人々が繋がりやすくなったことでも、いろんな専門家とコンタクトすることが容易になってきました。

そういう意味では、企業内研修は知識のインプットのために大きな投資をするのではなく、問題解決のセッションとしての投資に変わっていくべきだと思うのです。事前のオンライン学習で知識を事前にインプット、研修の場ではリアルな職場や組織の課題についてディスカッションをする。

学習は単なる手段でしかありません。この目的なき研修そのもので儲けていくことも、今後難しくなっていくでしょう。

注目していきたいですね。

ではでは、またの思考の旅へ。

人生を決めているもの。住宅と街並みとぼくの視線から考える人生論。

  家づくりを検討しはじめて約2ヶ月。あれだけ回避していたローンのリスクを受け入れて、家を建てることに決めた。日本の一戸建ての寿命が30年のところ、90年もつ家を建てることを知ったのが大きなきっかけだった。90年もてば3歳の息子も死ぬまで住むことができるだろう。それならローンを組...